「あの番犬ルドルフは西門を守るためにここにいるの。

その証拠に番犬ルドルフは西門と一定の距離を保って離れないでしょ。

つまり私たちは番犬ルドルフが動けるテリトリーに入らない限りは攻撃されないの」



晴江が自信たっぷりにそう言ったあとに、早苗は番犬ルドルフの様子をもう一度確認してみた。



確かに自分たちと番犬ルドルフの距離はわずか二百メートルくらいだが、番犬ルドルフは自分たちを攻撃してこない。



それに番犬ルドルフの側にある五人のクラスメイトの遺体は、どれもが西門から近い場所に転がっていた。



早苗はその事実を確認した後に、晴江の顔に目を向けた。



(あんなバケモノを目の前にしてパニックになってもおかしくないのに、どうして晴江はあんなにも冷静でいられるの?

まるで晴江の時間だけが止まっているみたい。

信じられないよ……。

晴江は番犬ルドルフが怖くないの?)



早苗が晴江の気持ちを量りかねているとき、晴江が静かな声でこう言った。



「私が番犬ルドルフのテリトリーを暴いてやる。

早苗と菜々美もついてきな」



晴江はそう言うと、青く光り輝くシャイニングサーベルを握りしめ、番犬ルドルフの方へと歩き出した。