「だけどさぁ、紗栄子は校舎の屋上から飛び降りて自殺するなんて、本当に最後まで負け犬だよね。

そんな死に方したら、誰かが慌てるとでも思っているのかしら?

ハハハッ。

本当にバカね」



あれほど紗栄子をいじめていた晴江が、少しの罪悪感も感じさせずにそう言ったのを智恵は眉をひそめて聞いていた。



紗栄子が自殺して、紗栄子の机からは遺書まで出てきたという噂なのに、晴江がそれを少しも気にしていないのはなぜだろうと、智恵は声には出さずに考えていた。



もしも本当に紗栄子の遺書があるならば、真っ先に晴江のことが書いているはずなのに……。



「晴江、よしなよ。

さすがに不謹慎過ぎるよ」



晴江のグループの一人である早苗が周りの目を気にしながらそう言った。



「そうだよ、晴江。

今日くらいはさ、紗栄子の悪口は止めた方がいいよ」



早苗に続き菜々美も周りの目を気にしてそう言った。



紗栄子の自殺という事実が決して消すことができないならば、少しでも責任を逃れる方法を考えたい。



そんな二人の無言のメッセージを晴江は無視してこう言った。



「あんたたち、急にマジメになってどうしたの?

もしかして、紗栄子の自殺に怯えてるの?

昨日までのあんたたちの言葉をみんなが聞いているのに」



晴江は生まれながらの特権階級だからなのか、人に媚びたことが一度もない。



そして人を威圧し、従える術を生まれつき持っていた。