(マジでヤバイよ……。

虎治君と紗栄子の殺し合いが始まっちまう。

紗栄子は今のところオレのことは眼中にないみたいだ。

それなら、虎治君が紗栄子に勝てばオレは助かる……)



廊下の端で倒れている辰雄は自分が空気にでもなったみたいにできるだけ気配を消していた。



二人の暴力の化身から自分の身を隠すために。



辰雄から見た紗栄子はバケモノだが、虎治もまた別の意味でバケモノだ。



普通の人は他人を傷つけることをためらうが、原島虎治はその感覚が壊れていた。



まるで破壊こそが正義と信じているかのように……。



一触即発の緊迫した空気の中で、紗栄子が何の前触れもなく前に踏み込み、一瞬にして虎治との距離を詰めた。



そして目にも止まらぬ速さで制裁の槍が虎治の首をめがけて伸びていった。



辰雄はその衝撃的な瞬間を息をするのも忘れて見つめていた。