「私はそろそろ行かなくちゃ。

早くしないと、人が殺されるのを見逃しちゃうから」



「悪趣味だな。

オレよりも根性が腐ってやがる」



虎治がそう言った言葉に晴江はうれしそうに笑うと、虎治の脇をすり抜けるよりにして、長い廊下を歩いていった。



そして、スラリと背が高いモデルのような美少女は、二人の子分を引き連れて、暗闇の中へと消えていった。



虎治はそんな晴江の背中を見えなくなるまで見つめていた。



触れたケガをしそうなトゲだらけの孤高の美少女の本当の気持ちを知りたくて……。



「晴江、西門を最初に抜けるって、どうするつもりなの?

西門には番犬ルドルフがいるはずだよ」



早苗は不安な気持ちで晴江に言った。



晴江はそんな最悪の状況に飛び込むことを楽しむようにこう言った。



「私はね、ヤバい場所に行くとワクワクしてくるの。

この私は脅かす何かがあるなんて、楽しくて仕方がないよ。

紗栄子をいじめてたときも楽しくて仕方がなかったけど、紗栄子が反撃してきた今はあのときよりももっと楽しい。

でもね、紗栄子は所詮、紗栄子よ。

千年経ってもこの私には勝てないわ」



晴江は傲慢な口調でそう言うと、紗栄子をいじめていた最近の過去を思い出していた。