「虎治のクセに考えているのね。

でもね、私だってバカじゃないわ。

番犬ルドルフがバケモノだってことくらいは気づいてる」



「それじゃ、何で西門に行くつもりなんだ?」



晴江は虎治からの予想していた質問に得意気にこう答えた。



「うちのクラスの生徒が番犬ルドルフに殺されるのを見にいくの。

人が殺されるところが見れるなんて貴重な体験でしょ。

私はそんな貴重な体験をたくさんしたいの」



晴江は将来、作家になると決めていた。



だから、人が残酷に殺されるシーンは是非とも見たいと思っていた。



そして人は死ぬ間際に恐怖の中でどんな悲鳴を上げるのかを晴江は知りたいと思っていた。



「でもね、私は人が殺されるのを見たいだけじゃないのよ。

あわよくば、番犬ルドルフを殺して、私が最初にこの学園を出ていく。

私は負けず嫌いなの。

虎治ならわかるでしょ」



そう言って笑った晴江はすこぶるキレイだ。



でも、この美少女の笑顔の裏にはトゲがある。



晴江は美しい容姿を持ちながら、優しさの欠片もない女だから。



晴江はまた虎治を誘うようにその美形の顔で妖しく笑うと、最後に虎治にこう言った。