「ところでよ、お前たちはどこに行くつもりだよ。

目的もなく夜の校舎を歩いているとは思えねぇけどな」



虎治が思う晴江は、心は冷たいが頭はキレる女だ。



そんな晴江がどんな行動を取るつもりなのか、虎治は純粋に知りたかった。



「私たちは西門に行くの。

西門を開けるスイッチを押したのは私だから」



晴江は勝ち誇ったようにそう言ったが、虎治は晴江の言葉に失望していた。



西門から西条学園中学を出ていくのは、最も助かる確率が高く見えるが、実際はそうじゃない。



簡単に見えるゴールは、きっと獲物をおびき寄せる罠に違いないのだ。



虎治はそう思って、自分の思うことを晴江に言った。



「西門に現れた番犬ルドルフとかいう奴はきっとヤバイぜ。

紗栄子みたいにバケモノに変えられた犬だと思った方がいい。

西門に行ったら死ぬぜ」



虎治がそう言うと、晴江はうれしそうな顔でまた笑った。