(西条学園中学のマップの青いランプが動き出した。

紗栄子は1年6組の教室を出て、次のターゲットを探しているんだ)



智恵は復讐の鬼と化した紗栄子の存在に怯えながら、自分が初めて紗栄子を裏切ったあの日のことを思い出していた。



そしてあのとき、自分に裏切られた紗栄子の気持ちを真剣に考えた。



智恵は紗栄子を助けられなかったことを仕方がないことだと思って、自分を正当化していたが、紗栄子はそんな智恵を憎んでいた。



(私は紗栄子が最も憎む四人のうちの一人だ。

紗栄子はきっと憎い私を探している。

私のことを殺すために……)



智恵は紗栄子からのSOSを受け取っていた。



そして紗栄子は智恵がそのSOSに気づいていることを知っていた。



それなのに、二人の心はすれ違った。



それは智恵の保身のためだ。



智恵は自分の力で助けられない紗栄子よりも、自分の身を守ることを選んでいた。



(紗栄子は私を憎んでいるかもしれない。

でも、紗栄子。

もしも私と紗栄子の立場が逆だったら、紗栄子は私を助けられた?

私は誰かを助けられるほどに強くない。

私は弱くてズルい人間だから……)