『泣いているの、篠田梨華。

私が苦しんでいたときは平気で私を無視したくせに……』



梨華の涙でにじむ視界の中に紗栄子からのメッセージが写り込んだ。



梨華は深い怒りと悲しみの中でそのメッセージを読んでいた。



『私は決して忘れない。

お前が私を無視したことを。

私の存在をなかったみたいにしたことを』



殺人ネズミの群れは死んだ宏和の体を貪っていて、宏和の破れた制服のすき間から宏和のあばら骨が見えていた。



それを目にした梨華はこんな残酷なことが起きた理由を怒りで震えながら考えていた。



(私たちは昨日まで普通に生きて、幸せだった。

自分が死ぬとか宏和が死ぬとか、そんなことを考えたことすらなかった。

何で私は紗栄子に憎まれているの?

紗栄子なんて、クラスで最下位のどうでもいい存在だったのに……)



梨華は失ったものの大きさに心が壊れそうになりながら、瞳に涙を浮かべ、紗栄子のことをにらんでいた。



「紗栄子さえ生き返ってこなければ、こんなことにはならなかったのに……。

紗栄子さえ生き返ってこなければ!」



梨華はそう叫ぶと我を忘れて紗栄子に殴りかかっていた。



でも、そんな梨華の拳は紗栄子には届かず、梨華の足は止まってしまった。