(何て力なの……。

紗栄子は片手で槍を持っているのに、私が全力で引っ張っても槍がピクリとも動かない……。

こんなのってないよ……。

紗栄子はもう人じゃないの?)



凉子は自分が感情に流されて取ってしまった行動が取り返しのつかないものだと気づいてしまった。



心のどこかで以前と変わらない容姿の紗栄子を侮っていたのかもしれなかった。



だけど、今の凉子には過ちを犯す前の自分が取るべき行動がハッキリとわかっていた。



自分は麻耶の死を仕方がないことだとあきらめて、わき目もふらずに紗栄子から逃げるべきだったのだ。



今の自分はまるでバケモノに挑んだ小人のようだ。



自分は自分の無力さに少しも気づいていなかったのだ。