(生神亮治はまだ四十代なのに、薄毛の白髪頭のせいで、まるでおじいちゃんに見える。

もしも生神亮治に世界トップクラスの権力と莫大な財産がなかったら、生神亮治は不気味な変質者でしかない。

彼の才能がずば抜けているから、誰もそんなことは言わないけれど……)



生神亮治の恋人、山崎リリコはまるでグラビアアイドルのようなスタイルをしたまだ二十歳の美女だった。



そんなにも美しいリリコが生神亮治の恋人になっている理由は、生神亮治の恋人になれば、素敵な恋人というカテゴリーのもの以外のすべてのものを手に入れられるからだ。



リリコは生神の七光りのおかげで、富も権力も有り余るほどに持っていた。



「紗栄子は時間内にすべての敵を殺せるかな」



生神は目の前にある巨大モニターを見てそう言うと、不気味に笑い、血のしたたる生肉を口にした。



そしてその後で、恋人のリリコに寄り添い、リリコの頬にキスをした。



「ねぇ、リリコ。

私は今、幸せなんだ。

なぜだかわかるかい?」



リリコは生神のその問いかけに、言葉を返さず、微笑みだけを返していた。



「だってリリコ、西条学園中学の生徒は死への恐怖に怯えているのに、私はこの豪華な部屋でワインを飲みながら、美しいリリコと話している。

この立場の違いが人を幸せにするんだよ。

平等な世の中なんてつまらない。

私は奴らのようなゴミみたいな命が不平等に消えていくときに、最高の幸せを感じるんだ」



リリコは、天才でもあり、人間のグズでもある生神の二面性に眉をひそめた。



神様はどうしてこんなにもアンバランスで極端な人間を作ってしまったのだろうと思いながら。