生神亮治は豪華な自宅のリビングで、高級ワインを飲みながら、二十歳も若い恋人と共に西条学園中学で繰り広げられているリベンジゲームを見ていた。



クローンの体に記憶を宿して蘇った小原紗栄子は生前の恨みと憎しみを晴らすために、復讐の鬼と化して、残酷に3年2組のクラスメイトたちを殺していた。



そして生神は紗栄子に誰かが殺される度に、込み上げてくるうれしさを抑えきれずに満面の笑みを浮かべていた。



人の命は原則として一つしかない。



それは歴史が始まるずっと前から当たり前の真理であった。



でも、生神は遺伝子の研究を続けていくうちにその真理と思われていたものが間違いだとわかってしまった。



人の記憶は別の肉体に移し替えることができ、その結果として、人はいつまでも新しい体で生き続けることができるし、人の命はいくつでも複製ができるのだ。



だとしたら、人の命は尊くない。



もしも倫理を無視できるとしたら、人の命は量産される家畜の命と大差がないというのが生神の導きだした答えだった。



生神は西条学園中学の音楽室で加藤が紗栄子に刺し殺されるシーンを見て、声を上げて笑っていた。



「見たか、リリコ。

また一人、紗栄子が人を殺したぞ。

人の命がまるでゴミのように消えていく。

ハハハッ、愉快だ!

最高に愉快だ!」



そう話しかけられた恋人のリリコは、その美しい顔で生神に優しく微笑んだが、心の中では生神のサイコパスぶりを受けつけてはいなかった。