(逃げなきゃ……。

紗栄子に捕まったら、殺される!)



凉子はまるで小動物が猛獣から逃げるかのごとく、生き延びるために紗栄子から遠ざかることだけを考えていた。



紗栄子という驚異的な身体能力を持つバケモノに勝てる見込みはどこにもない。



そんな紗栄子と争う余地が自分たちには少しもないから……。



凉子たちが走り出してからすぐに紗栄子が追ってくる足音が聞こえた。



紗栄子が走り出した目的はわかりすぎるほどわかっている。



紗栄子は復讐を誓った凉子と麻耶を制裁の槍で刺し殺すつもりなのだ。



暗闇に包まれた西条学園中学の中で、命をかけた追いかけっこが始まっていた。



凉子と麻耶は死への恐怖に包まれながら全力で逃げるだけを考えていた。