「凉子、紗栄子が来たよ。

私たち、殺される……」



臆病な麻耶は今にも泣き出しそうになりながら、凉子にそう話しかけた。



凉子は自分もその場から逃げ出したい気持ちでいっぱいだったが、勇気を振り絞って麻耶に言葉を返していた。



「麻耶、悲観的にならないで。

きっと助かるって信じよう。

どうにかしてここから逃げるの」



凉子はそう言ったあとに音楽室を見回し、逃げ道を探していた。



そして凉子はベランダ側のドアに目を向けると、頭の中で音楽室から脱出する方法を考えていた。



(この音楽室には出口が二つある。

一つは今、紗栄子が入ってきた廊下側のドア。

そしてもう一つはベランダ側にあるガラス製のドアだ。

紗栄子は今、加藤先生と向き合っている。

今ならベランダ側のドアから……)



凉子がそう思って麻耶と一緒に逃げようと、麻耶に声をかけようとしたとき、急に凉子のマイページがチャット画面に切り替わり、紗栄子からのメッセージが凉子の目の前に現れた。



『峯岸凉子、私にはお前の考えていることがわかっている。

もしもお前たちがベランダの方へ逃げたなら、真っ先にお前の後頭部を制裁の槍で貫いてやる!』



凉子はそのメッセージを見て、心臓がドキリと跳ねた。



蘇ってきた紗栄子は、まるで人の心を読み取る悪魔のようだと凉子は思って恐怖していた。