「虎治君、本気かよ。

さっき教室で見ただろ。

紗栄子が片手で誠二がフルスイングした椅子を受け止めたのを……。

その後に紗栄子は手にした槍で、ためらいなく誠二の喉を刺したんだぜ。

紗栄子はバケモノだよ。

戦うべきじゃない相手だよ」



「おい、辰雄。

まさかお前、オレの命令に逆らうつもりじゃねぇよな」



虎治はそう言うと、バッドを肩に担いだまま、辰雄へと近づいていった。



辰雄は自分の言葉が虎治の逆鱗に触れ、自分の身に危険な脅威が近づいてくることを感じていた。



「辰雄、今すぐ選べ。

オレと一緒に紗栄子を殺しにいくか、それともここでオレに意識がなくなるまで殴られるか」



辰雄は虎治のその言葉にゾッとして、胃がギュッと締め付けられるのを感じていた。



(何でこんなことになるんだよ……。

紗栄子を殺しにいくのも地獄、虎治君に逆らうのも地獄だ。

こんな最悪の二択をどうしてオレが選ばなくちゃならないんだ?)



辰雄は二択の選択肢のどちらも選びたくはなかった。



でも、自分に迫ってくる原島虎治という脅威を前にして、辰雄はどもりながら自分の決断を虎治に伝えた。