『校舎の屋上からの飛び降り自殺だよ。

一年生が紗栄子の遺体を発見して、教頭先生が警察に連絡したらしいよ。

どうする、晴江?

私たち、紗栄子をいじめたけど、自殺するなんて思わなかったよね』



晴江は早苗からのチャットを目で追いながら、早苗の狼狽する様子が頭の中に思い浮かんで、思わず口元を緩めていた。



晴江の父はARゲームの開発者で、子供たちの部屋をゲームの世界に変えてしまったゲーム業界の権威だった。



国民総平等時代と言われている現代には98パーセントの平民と2パーセントの特権階級が存在していた。



AIやロボットが富を作り出す世の中で、98パーセントの平民はAIやロボットに生産性では勝てない。



つまり平民はAIやロボットよりも劣るとされている凡人である。



でも、晴江の父のように世の中に新たな価値を与えることができる人間は特権階級に属する。



特権階級の人間のマイページの左上には王冠のマークがついており、すべての人や物がネットで繋がっている現代で、特権階級の人間は誰でもすぐに識別できた。



そして平民は特権階級に頭を垂れ、敬意を示すのが普通とされていた。



なぜなら、特権階級の人間だけが世の中に価値を与え、この世を更なる発展へと導いているからだ。



特権階級の父を持つ晴江のマイページの左上にも王冠のマークがあった。



それは晴江が特権階級の一族であることを示すものだった。