他の男の口から、悠音、という単語を聞くのがこんなにも耳障りだとは思ってなかった。
……きも。鬱陶し。


「……おまえ、なんちゅう顔してんだよ……」
「次悠音の名前呼んだら喉潰してやる」


小さく呟いた声は拓海には届いていなかったらしく、不審そうな顔だけが俺を見つめる。


言いたい。
悠音と付き合ってるって、言いたい…けど。


「あー……何?お前花園さんのこと好きなん?バレー部恋愛禁止ご愁傷様」
「……」


拓海はニカッと笑って、俺の頭をわしゃわしゃと撫でてくる。


そう、うちのバレー部、マネージャーとの恋愛禁止。
バレー部に入るって決めた以上、悠音と付き合ってることは誰にも言えない。
ましてや、同棲とか……言えない。


悠音がいないと生きていけない。
悠音がいたら、どこででも生きていける気がする。
あんまりうまくないバレーだって悠音のためなら死ぬ気で頑張れる。