「花園悠音さん、だったよね?」


登校してすぐ、下駄箱。
ローファーのかかとを踏まないように爪先立ちをして上履きを床に落とした時に、頭の上からそんな声が聞こえた。
さっきまで、いなかったのに。


見たことある顔……。
あ、なんだったっけ?
だれだっけ?見たことあるのに……だれだっけ?


「は、ぁ……?そうですけど、何かご用ですか?」
「僕は柳風馬(やなぎふうま)」


あっ……生徒会長さんだ。
なんか、新入生挨拶の時に、対面した記憶がある……かもしれない。
やばい、璃汰以外の男の子の顔が全然覚えられなくなっちゃってるな……。
まぁ、そっちの方が璃汰も嬉しいかな?


思わず口元が緩む。


あ、違う違う、会長さんのお話、聞いてあげなきゃ。


「僕、キミに一目惚れしちゃってさ。
付き合って欲しい」


……聞かなきゃよかった。


幸運にも、周りに生徒はほとんどいない。
こんな盛大な公開告白も、軽い噂で止まりそうだ。