蓮司から三十分ほど待っててほしいと連絡がきて、帰り支度をして休憩室でぼんやりしていると

「香田さん」

と声をかけられた。

仕事では会話をしたことはあるが、プライベートでは挨拶程度しか言葉を交わしたことのない岡田さんに声をかけられ思わずぴんと背筋が伸びた。

そんな私を見て

「そんなに緊張しないでよ」

とくすりと笑われた。

長身で黒渕眼鏡をかけた岡田さんは、細身のダークグレーのスーツをさらりと着こなしているイケメンだ。

「あいつ…モテるから大変だな。

でも…アイツの焦った顔や困ってる顔を見たのははじめてだな」

と表情を崩してクックッと笑った。

「早急に誤解は解いておくから安心してよ」

「えっ?」

何の話だかわからなくて目をぱちぱちさせていると

「明莉」

と入り口で不機嫌な顔をした蓮司が腕を組んで立っていた。

「なんだよ、ちょっと話したくらいでやきもち妬くなよ!

心が狭いやつだな」

「うるせぇ。

嫌なものは嫌なんだよ。結構明莉は人の気持ちに疎くて鈍感なとこあるからきがきじゃないんだ」

そういって私の鞄を持ち

「帰ろう」

と私を促した。