「おはよう、明莉。
珍しくギリギリの出勤じゃない」

「菜摘、おはよう」

少し寝不足気味の私は出勤したばかりだというのに、朝から欠伸を噛み殺していた。

私ですらこんなにも眠いのだから、蓮司の方はもっと眠いはずた。

「随分と朝から眠そうだね。
昨日は寝るの遅かったの?

あっ、そうか。
決算で香田さん帰りが遅かったよね」

「うん、それもあるけど…」

と言いかけて慌てて口をつぐむ。

菜摘はニヤニヤして

「久々にダーリンを充電できた?
最近は帰りが遅かったみたいだもんね。
んー、仲良しで良かった良かった」

と背中をバシバシ叩かれた。

「拓斗がさ、異動してきた美人なフロント、佐藤さんだっけ?
香田さんと結構距離近くてやけに仲がいいから心配してたんだよね。

香田さんと仲良くやってるなら大丈夫だね。

結婚式までもうあと二週間でしょ?
もめたりしないでよね?」

「うっ、うん…大丈夫。
心配かけてごめんね。
澤田にも大丈夫だって伝えておいてね」

パソコンを立ち上げて、シュシュで髪をひとつに束ねる。

やっぱり気のせいじゃなかったんだ……。

菜摘の言葉に胸の奥がざわついた。