コソコソと、俺に呟く神楽。


まぁ確かに、こんなだと思ってなかった。
それでも好き…だったんだけどさ。



「付き合ってる間、なんかしたっけ?お前ら」
「別に。家は何回か行き来したけど、デートというデートは断られてた」




遊びに行こうと誘ったら「うーん」とか、「ちょっと…」とか、断られ続けてて。



「キスとか」
「…なにお前」



冷めた目で見つめると、神楽はハッとするとヘラヘラ笑う。



「ごめんごめん、弥那ちゃん近いと答えづらいよな、また聞くわ」
「もう聞くなっ!」



なんだこいつ。
未練たらたらなのに気付いてるくせして、傷えぐってくるのどうにかしろ。



…実際、なんもしてないし。
それに関しては、あんまり軽いと思われたくなかっただけなんだけどさ。



…なんか、俺、ダメだったんだろうな、ほんと。彼氏に向いてなかったっていうか。
少なくとも弥那の彼氏には、なれなかったな。最後まで。




チラリと弥那の方を見ると、すでに食事を終えて、クッションに頭を預けて眠っていた。