「とにかく、ここではこの前の続きからだ」


広貴が気を取り直すようにそう言い、棚から亜香里ちゃんの日記を取り出した。


この前は途中までしか読むことができなかった。


弟ができて喜んでいた亜香里ちゃんだったけど、その心情が徐々に変化し始めていたっけ。


広貴が日記を広げて、その周りを囲む形になった。


【お母さんもお父さんも、男の子がほしかったんだって。


どうして? ってきくと、このいえはお金がたくさんあって、大きないえだからっていわれた。


いえが大きいと男の子がほしいのは、どうしてだろう?】


亜香里ちゃんの素朴な疑問がつづられている。


「跡取りの問題があったんだろうな」


紀人が呟いた。


「きっとそうだよね。亜香里ちゃんが生まれた時は両親も優しかったみたいだけど、弟が生まれたことでだんだん態度が変わって来たんだよ」


と、愛奈が言った。