「おはよう!春樹」 俺に気づいた伊吹幸先輩がいう。 ここは農業芸術大学の温室。農芸大農学部の者と教授だけが入れる場所だ。 ここには、薔薇、ベゴニア、すみれ、勿忘草など、とにかくたくさんの花がある。 花にジョウロで水をあげながら、先輩は俺に笑かける。 「おはようございます、幸先輩!」 俺はそう元気よく言った。 俺は農学部一年、一ノ瀬春樹。目の前にいるこの先輩に、片思いをしている。