しかし、相手は男だ。


あたしの拳は簡単に止められてしまった。


腕を掴まれ、それ以上動けない。


「おいおい、せっかくお楽しみだと思ったのによぉ」


緑毛がタバコをふかしながら文句を言う。


「なんなら、この子が相手でもいいけど?」


あたしの手首を掴んでいる赤毛が言った。


「ダメに決まってんだろ。汚い手で触るな」


智樹にすごまれて、赤毛は仕方なくあたしの手首を離した。


解放されたあたしはすぐに武へ駆け寄った。


「武大丈夫? 傷は?」


声をかけながら助け起こそうとしたのだが……。


伸ばしたあたしの手を、武は振り払ったのだ。


無言でジッとあたしを睨み付けている。


その目から強い憎悪が感じられて、あたしは言葉を失ってしまった。


武はそのまま何も言わず、倉庫を出て行ったのだった。