虚しい日々が続いていた。

 姿月が業界から姿を消してから約半年後、僕もストリップの世界を離れた。

あれ程、照明の仕事が自分にとっての天職とさえ思っていたのにだ。

 ただ食って行く為だけの生活……

 人はパンのみにて生きて行くのではない……

 何かに飢えていた。

 毎日が渇きの連続。

 そんな中、何年振りかで姿月の姿を見た。

 何の気無しにコンビニで手にした雑誌に彼女が出ていた。

 小さな写真ではあったが、その記事で彼女がイベントやクラブなどを活躍の場としている事が判った。

 食い入るようにその記事を読み返した。

 自分の生き様を貫ける強さを羨ましく思い、その雑誌を買った。


 彼女は足掻くように舞台に立ち続けている。


 自分を場末のキャバレー回りと卑下してはいても、ダンサーとしてのプライドと魂は他の誰よりも崇高なものだと感じ取れた。

 彼女の足掻く姿を心から羨ましく思い、それに比べて、足掻く事さえしなかった自分の情け無さに、茫然自失となった。


 美しき足掻き……


 理由も無く、ただぬるま湯に浸るが如くその場に留まる事は足掻きでも何でも無い。

 足掻きもせず流されるだけの人間が多い中、改めて彼女の舞台をもう一度観てみたいなと思った。

 ストリップ業界を離れてからこの方、僕はただの一度も劇場に行っていない。

 個人的に観てみたいなと思える踊り子が居ない訳ではない。

 あれから十年……

 僕がライトを当てた踊り子の中には、まだ現役で頑張っている子も居る。

 たまに名前を雑誌や新聞の紹介記事で見た時には、懐かしさを感じはするが、何故か直接劇場に足を運ぼうとはしなかった。


 あれ程、ステージに魅せられていたのに……


 今でも、あの十一日間の事を夢に見る。


 僕が創り出す光りの中で、姿月は美神の如く恍惚の笑みを浮かべている……

 そう、僕の創り出す光りの中で……