八月一日の朝が来た。

 劇場の最上階に住み込んでいた僕は、何時もより一時間ばかり早く階下の事務所に降りた。

 クリーニングしたてのワイシャツに着替え、身支度をする。軽く腹拵えをして一階の劇場受付へ行くと、既に客が並んでいた。

 数を数えてみる。

 七、八、九……

 十四、五人は並んでいた。

 久し振りだな……

 開場迄まだ一時間近くある。

 この客達が、全部今日から始まるステージの踊り子達目当てとは思っていなかった。

 お盆特別興行として、昼の二回だけAV紛いの企画ステージを組んでいた。

 それ目当ての客なんだろうと思いながら、場内をチェックし、乗り込んで来る踊り子達の到着を待ち望んでいた。

 十時近くなると一人、又一人と出演する踊り子達がやって来た。

 楽屋に案内し、出し物の音を受け取る。

 一枚のMDに落としてくれている踊り子も居れば、何枚かのCDを渡し、

「このCDの何曲目と、こっちの何曲目で、最後はこれね」

 と、無造作に言い、舞台化粧に没頭する踊り子も居る。

 CDやMDを受け取りながら、簡単に照明のポイントを聞き、メモにして行く。

 この頃、僕が照明のメインだったから、初日の一回目は必ず担当した。

「あたし、ここで一旦袖に引っ込むから、暗転して欲しいの。ここ、ブラックライトあります?」

「すいません、ブラックライトは無いんです」

「あたしは板付けで、ダンスの時は適当にパキパキした照明にしてくれればいいわ。後は任す」

 劇場のキャパや照明設備に限界がある事を踊り子達は良く判っている。

 余り期待されてないな……

 そう感じる時もあれば、どうせ言った通りには出来ないでしょう的な諦めの空気を感ずる時もある。

 姿月が乗り込んで来た。

 楽屋に出向く。

 少しばかり緊張している自分が居た。

「はじめまして、照明を担当します佐伯と言います」

 我ながら随分と堅苦しい挨拶をしたものだと思った。

 こちらに向き直った姿月は、一瞬後退りしそうになる位に綺麗だった。