凛子はエル・ドラドに来てもう五年にはなる。

 №1にこそなった事は一度も無いが、一時期は常にベスト3に入る売り上げを上げていた。

 取り立てて美人という訳ではないが、客あしらいに関しては右に出る者は無く、マネージャーなどは、新規で難しそうな客などが来た時は、必ず凛子をつける。

 年齢はもう三十半ばにはなっていたが、これといった特定の男も作らず、今日まで勤めて来た。

 紀子が初めて客についた時に、隣で一から十までホステスのいろはを実践して見せてくれたのは彼女であった。

 マネージャーからすれば、ドル箱になるかも知れないと思った紀子を実践の場で指導してくれる絶好のホステスだったのだ。

 そういう関係もあって、紀子と凛子は互いに気遣い無く付き合う関係になっていった。

 凛子にすればふた周りも年下になるのだが、最初のうちこそそういう目線で見ていた部分が、ある事をきっかけに改めるようになった。

 それは、紀子が入店してまだ一ヶ月も経たない日の事で、店が珍しく一日中暇な夜だった。

 店前に立っていた従業員が、とにかく客を入れなければと、かなり無理をして客引きをした。


「安くします!ぽっきりでいいですよ!」


 呼び込みなど滅多にしない黒服達が呼び込んだ客は、それこそ普段なら来れそうも無い客層ばかりであった。

 客達にしてみれば、安キャバレーしか行った事の無い連中だから、エル・ドラドのような店での遊び方など知る由も無い。

 滅多に拝めない上玉ばかりが自分達の席に着いたものだから、当然、普段以上に羽目を外した。