「相変わらずモテるね」
「見てたんですか。止めに入ってくれればよかったのに」
「冗談でしょ、嫌だよ。お疲れ様」
OLふたり組への対応が面倒だったのか、白坂くんがため息を落とすから思わず笑う。
「ああいう、着替えとかメイクとかの準備に長時間かけるようなタイプって苦手なんです。異世界のひとみたいで話すのさえ疲れる」
うんざりした横顔に「まぁ、好みはあるよね」と苦笑いをこぼした。
「でも、お客様相手にしたときには、失礼のない発言を心がけてね。何重にもオブラートに包んで……っていうか、オブラートに包まなければならないような発言は避ける方向がいいかも」
白坂くんはこの顔だ。
この先、内見でふたりきりになったときとかに、お客様に言い寄られることもあるかもしれない。
そのとき、ひどい拒否の仕方をして契約を逃したりしたら可哀相だ。
そんなのどう考えたってお客様側が悪いけれど、きっと後々叱責されるのは白坂くんだ。
そういった理不尽なことは多いから、なるべく避けて通ってほしい。
そう思い釘を刺すと、そんな私を白坂くんはじっと見た。
「なに?」
「桜井さんって、俺に対してあくまでも仕事上の立場でしか接しませんよね」
「……だってそれは同僚だから」
急になにを言い出したんだろうと思いながら答えてハッとする。
「あ、沼田さんのこと言ってる? だとしたら、本人には本当に悪気はないんだよ。ただ、異常にマスコミ体質っていうか……スキャンダルが大好きでなにか面白い話が出るまで質問攻めしちゃうだけで」
必死に庇う私を見て、白坂くんは「あー、あれは完全なハラスメントですよね」と冷静な顔で漏らす。



