私が内見案内をするときは、大体、白坂くんにも勉強の意味を込めて同席してもらっている。
これは白坂くんに限らず、今までの新入社員は全員してきたことだけれど、ふたりで車に乗っているところなんて女性社員に発見されたら……と考えると怖い。

いくら仕事だと主張したところで無駄なんだろうから、絶対に見つかりたくないものだ。

数か月前までは、どんなに消臭スプレーを振りかけたところで煙草臭かった営業車は、先月一斉に新車に変わり禁煙となった。

愛煙家社員からは文句が出ているけれど、煙草を吸わない身としてはとても快適だ。

セダン型の車は電気でも走行可能なエコカーなため、走行音もとても静かで振動も少ない。

ハンドルを握った白坂くんがウインカーを出し、大通りの本線に合流する。私よりもスムーズな運転に感心しながら、背中をシートに沈め小さく息をもらした。

芝浦と微妙な空気になってから一週間。まだ仲直りはしていない。

『結局、桜井も社長の甥っ子だからって特別扱いしてるのかと思って』

あの時の芝浦はおかしかった。
あとになって気づいたけれど、普段はあんなことを言うやつじゃない。たぶん、相当仕事で疲れていただとか、事情があったんだろう。

芝浦のことは少し気がかりではあるものの、私は私で仕事でいっぱいいっぱいということもあり、放置したまま一週間が経ってしまっていた。