「誤解があるなら、ちゃんと解いてから……その、したい」

直接的な言い方になってしまい、顔が熱を持つ。
部屋が暗くてよかったと思った。

「あの時、芝浦、告白したよね。でも、嘘ついて覚えてないふりをしてた。だから私は、なかったことにしたいんだと思ったんだけど……どうして?」

結局、あの告白はなんだったんだろう。
ずっと残ったままの疑問をぶつけると、芝浦は少し黙ってからポツリと答える。

「本当は、ずいぶん前から桜井が好きだったんだよ」
「前って……いつから?」

その問いに、芝浦は言うのをためらったような間のあとで、ゆっくりと口を開いた。
「一年近く前」と、低く耳障りのいい声が教えてくれる。

「初めて意識したのは、桜井が俺の前で泣いたとき。いつもとは全然違ってて、桜井の弱い部分を見たとき、俺が守ってやりたいと思ったのがはじまりだった。意識し出したら……もうあとはどんどん好きになっていった」

聞いて驚く。
だって、芝浦の前で泣いたのなんて本当に一年以上前だ。
そんな前から……?

「同期会のとき、自分だって大変なのにいつも聞き役に回るところも、仕事でいっぱいいっぱいなのに細かい雑務もおざなりにしないところも、時々驚くほど素直になるところも……仕草とか表情とか、好きなところをあげたらきりがない」

芝浦には、会社でも好きだって言われている。
だから芝浦の気持ちは知っているのに……初めての告白を受けたみたいにドキドキしていた。