「あの……お二人はどこからいらっしゃったんですか?」

「王都だが?」

「……私がにおいで失せもの探しをするなんて、王都で噂になっているんですか?」

ロザリーは疑問をそのままぶつけてみた。
失せもの探しがアイビーヒルの中で有名なのはわかる。近隣の町くらいになら噂が伝わることもあるだろう。しかし、王都はここから馬車で六時間ほどかかる。噂というものは行商人などの行き来によって広がるものだが、途中で情報が欠損することや正確じゃない情報が付随するのが当たり前。そこまで正確に伝わることは稀だ。

仮に正確に情報が伝わっていたとしても、どうして王都から離れたここでザックを探せると思うのか。
ある程度ザックの居場所にあたりを付けていなければ、ここへは来ないだろう。
そしてこの場所まで分かっているのなら、ザックの居場所を当てるのは簡単なはずなのだ。何せ、彼が最も懇意にしているイートン伯爵の屋敷がここにはある。ロザリーを頼るより先に、イートン伯爵邸を訪れたほうが早い。

「そ、それは、……その」

ふたりの依頼人は困ったように顔を見合わせた。
内心、しまったと思っているのが伝わってくる。やがて諦めたように茶髪のほうが話し出した。