あっさり言われるけれど、ロザリーの心臓はバックンバックン動いている。

「クロエを結婚させるには、先にケネスに嫁を見つけなきゃいけないようなのよ」

「俺はアイザックが落ち着くまでは結婚しませんよ」

さらりと返したケネスをひと睨みし、ケイティはロザリーの両手をギュッと握りしめた。

「ね? だからあなたとアイザック様にさっさとうまくいってもらわないと、私も困るのです。だから社交界デビューに関しては私にお任せなさい? 一流のレディにしてあげるから。……頑張りましょうね。ロザリーさん」

「は、はいっ!」

「いやあ、これで安心です。母上ならば、きっと彼女をどこに出しても恥ずかしくない令嬢にしていただけると信じています」

満面の笑みのケネスを見て、既に自分はケネスの掌の上に乗せられていたのだと、ロザリーは理解する。
どちらかと言えば単純明快な思考の持ち主であるロザリーは、もう考えるのを止めた。
ケネスが何を考えて動いているかなんて、ロザリーに予測がつくはずがない。

だったら、彼を信じればいいだけだ。だってケネスは、絶対にザックを守ろうとするはずなのだから。


その後、別件で出かけるというケネスと別れ、ロザリーはケイティとふたりきりになった。

「あなたの部屋に案内するわね」

連れられてきたのは、二階の一室だ。ベッドと書き物机のある、立派な部屋だ。ここを自由に使っていいと言われて、ビックリする。

「荷物はこれだけ?」

「は、はい」

「じゃあ、色々揃えないといけないわね」