それにしたって、かいがいしすぎるのではないかと思う。じっと上目遣いで見上げると、ケネスは苦笑しながら両手を上げて降参の姿勢を取った。

「打算的な事情もあるよ。イートン伯爵家はバーナート侯爵の派閥に入っていて、今議会での立場が危うくなっている。家の安泰を考える意味でも、ザックには第二王子としての立場を盤石なものにしてほしい。それに、君には特殊な能力がある。嗅ぎ分けのできる人間がいてくれれば、なにかが起きたときに犯人を特定するのに非常に役に立つ。常に危険と隣り合わせのザックの側にいてくれれば、誰が危険で誰が安全か、判断することが可能だ。俺はそれも君に期待している。ギブアンドテイクだ。俺たちの関係はイーブンだから、君が気にすることは無いよ」

あっさりと言われ、ロザリーの肩から力が抜けた。
自分たちのためでもあると言われればいくらかは気が楽になる。

「ではよろしくお願いいたします。社交界デビューすればザック様に会えますよね?」

「うん。少なくとも今よりは会えるようになる。君を見て、ザックは驚くだろうしアイビーヒルに帰れというかもしれない。でも負けないでほしいんだ。ザックの力になってやってほしい」