「そう……なんですね」
「好き合ってるんだから、互いに必要なんだろ? だったら離れていちゃだめだ。ザックの手紙を君のもとへ送らなかったのは、君の覚悟も確かめたかったからだよ。もし突然連絡が途絶えたら、君がどうするつもりなのか知りたかった。俺が使者を送る前に王都に出てきてくれたこと、本当にうれしく思うよ」
「ケネス様」
さっきは一瞬怒りたくなったが、ケネスが他の誰よりもザックを案じているのは明らかだ。
怒りの感情は直ぐになりをひそめ、静かな感謝が沸き上がってくる。
「ケネス様。本当に私を社交界デビューさせていただけるんですか?」
「ああ。そうなれば君は俺たちと一緒に王城やほかの貴族の夜会に出向くことができる。ザックに会えるんだ」
「はい! 嬉しいです」
ロザリーがぱっと顔を晴れ渡らせると、ケネスがにやりと、少し意地の悪い笑みを見せる。
「この一ヶ月のうちにいろいろ手配をさせてもらった。ルイス男爵からも承諾を得ているし、父にも後見になってもらう手筈はついている。あとは君の令嬢教育ってところだね。スパルタになるけど、覚悟してね」
「あ……」
たしかに、ロザリーの所作は、令嬢にしてはガサツだ。田舎の屋敷だったから、自由にしていても怒られなかったし、いざ令嬢教育をしようとしたタイミングで両親が事故で死んでしまった。
優雅に笑うケネスを見て、ロザリーはサーっと青ざめ、途方に暮れた。



