「ちょ、ちょっと待ってください。そんな内容の手紙受け取ってませんけど」
ケネスの説明に水を差すのは恐縮だが、そこははっきりさせておきたい。そんな手紙をもらえば、さすがのロザリーだってもう少しおとなしく待っている。
「そうだろうね。その手紙は俺の手元にある。一存で出していないんだ」
何の悪気もないようにケネスがするりと言うので、ロザリーは怒ったらいいのか分からなくなった。
「どうしてですか?」
「……大切な人を危険から遠ざけようとするのは美談かもしれないけれど、俺はそれがザックの悪い癖だと思っている。俺はむしろ、君を巻き込むべきだと思うんだよ。それを進言して、ザックと喧嘩になって。今俺は無職なわけ」
ははは、と笑われたが、ロザリーもレイモンドも開いた口が塞がらない。
「ちょ、ちょっと待ってくださいよ! それじゃ、ザック様は今王城で味方もなしにひとりなんですか?」
ケネスが傍にいたときでさえ、疲れ果てて精神を病んでいた彼が、ひとりで立ち向かっていると思ったら泣きそうだ。見放したケネスに恨み節を言いたくなる。
「一応父上やバーナード侯爵がいるからね。孤立無援というわけじゃないよ。ただ俺は、ザックの言うことが聞けないから、部下としては失格だから執務補佐を辞めてきたってだけだよ」
「だけ……って」



