お宿の看板娘でしたが、王妃様の毒見係はじめます。


 突然のケネスの歓迎についていけていないロザリーは、馬車の中で事の経緯を聞いた。

「俺はイートン伯爵邸の門番に手紙を預けて、そのままオルコット子爵家に向かったんだ。相変わらずの門前払いで、オードリーの姿もクリスの姿も見ることはできなかった。諦めて帰ろうとしたとき、うしろからこの馬車がやって来たんだよ。何事かと思ったら、ケネス様が出てきて、開いた口が塞がらなかった」

「俺は手紙を受け取ってすぐ、門番に届けに来た人物の特徴を聞いたんだ。どう考えてもレイモンドっぽかったから、オルコット子爵家に行けば会えるかなって当りを付けたんだよ。大正解だった」

レイモンドの言にケネスが続ける。ケネスは足を組んで、姿勢を正した。

「だが、話を聞いてみたら、反対されているんだってな」

ははは、と笑われて、レイモンドは嫌そうな顔で頭を抱えた。

「笑い事じゃないんですって。迎えに来たつもりが、顔さえ見れないなんて」

「オルコット家とうちはあまり交流が無いんだけどね。一緒に出席する夜会はないわけじゃない。協力してやるからそう落ち込むなよ」