「……無計画過ぎました」

言われてみればたしかにそうだ。平民が簡単に王城にはいれるわけがないし、そんなオープンなお城、セキュリティ的に心配だ。

でもせめて、元気かどうかだけでも知りたい。
ロザリーは、人々の視線が痛いと感じながらも、王城の門の前まで向かった。
馬車も通り抜けられる程の高さの門が今は閉まっている。両脇には門番が直立不動で立っていて、何度も行ったり来たりしていると、不審そうな視線が刺さってくる。門番のひとりが眉を寄せたまま声をかけてきた。

「お嬢ちゃん、お使いかい?」

「いえ、あの、えっと。……王城に入るにはどうすればいいですか?」

「許可証がないものは入れないよ。どこの屋敷の使用人なんだ? 忘れ物を届けに来るという話は今は聞いていないけど」

男爵令嬢とはいえ、今のロザリーの身なりは平民のそれだ。門番は完全にロザリーをどこかの貴族の使用人だと思い込んでいる。

「いえ、違うんです。その」

「ああ。下働きも今は募集していないよ。第一、王城に入る下働きは、推薦書がないとダメなんだ。君が働けるようなところじゃないよ。帰りな」

ロザリーはそれ以上何にも言えなかった。
悲しいような悔しいような気持ちが喉元まで沸き上がっているけれど、それを言葉にすることはできなかった。
だって、門番の言葉に間違いはない。今の自分は、王城に入る資格さえないのだ。