宿屋に残されたロザリーは、改めて部屋の中をよく見る。切り株亭よりも、一部屋が狭い。小さなベッドにベッドサイドテーブル。それだけの部屋だ。
この宿屋は少人数の宿泊客を受け入れる専門らしく、ひとり部屋とふたり部屋しかない。それ以上の人数はそれを専門にしている宿屋へ行ってくれとのことだ。王都には多くの店があり、棲み分けがされているのだろう。

ロザリーは貴重品をポシェットにいれ、街へと繰り出した。
建物が高くて視界が開けていない上に、道幅が狭い。そこを多くの人がひしめきあっているので、背の小さなロザリーは人の中で埋もれてしまう。
王都はアイビーヒルの三倍くらいの広さがある。街の人に尋ねると、南側が平民街、北側が貴族街となっているらしい。市場も分かれていて、平民街と貴族街では扱っている商品が違うそうだ。

「王城に入るにはどうしたらいいですか?」

「王城? 呼ばれてもいないのに行けるわけがないよ。門の前までならいけるけど、王城の近くは貴族街だから、平民は行くだけでも視線が痛いよ?」

行き来はできないわけではないが、平民で貴族街に行くのは主に雇われている使用人だけだという。
更にその向こうにある王城なんて、入れるわけもない。

情報をくれた人にお礼を言って別れた後、ロザリーは大きなため息をついた。