ウィストン伯爵は、あの場で絶命していた。
なぜ殺さずに捕らえなかったのかと責め立てようかとも思ったが、狙われたのがザックである以上、彼を守る立場にあるイートン伯爵もケネスも、強くは言えなかった。

「まあ、本当は俺が殺されたころに踏み込む予定だったんだろうけどな」

ザックは物騒なことを飄々と言ってのける。

「そうだね。そのあたりは当てが外れたんだろう。そうなれば父上だって殺害の関与を疑われる。対抗勢力である俺たちの力をそぎ落とすことができたはずだ。まあこの程度で済んだんだから……引き分けというところかな」

静かに聞いていたロザリーは身震いをする。
ロザリーがアンスバッハ侯爵と直接話したことはないが、彼女から見てすごいと思うケネスやザックを簡単に出し抜けるのだから、侯爵も相当頭が回る人間なのだろう。

ケネスはみなを見渡して苦笑する。

「……さて、困ったな。行き詰まったね」

「そうだな。まあでも、これで彼らも輝安鉱の毒は使えなくなったわけだ。今回の件を受けて、城内のすべての食器も確認されるし、造幣局に残っていた輝安鉱もすべて没収される。俺を廃するのに、彼らも別の手を考えなければならない」

「振り出しに戻ると言ったところかな」