お宿の看板娘でしたが、王妃様の毒見係はじめます。


「そんなことはないです。ただ、ザック様もカイラ様と会うのも久しぶりだろうから……」

ケネスがあまりに鋭いので、ドギマギしてしまう。
本当は、さっきからまっすぐにザックの目を見れない。

ロザリーは嘘が苦手だ。
だけど陛下から、自分のことは絶対に言うなと厳命されてしまっている。
内緒にしていると思うと変に力が入り、カイラに対してもどこかぎこちなくなっていた。
ケネスとザックが来てくれてホッとしたのもつかの間、ザックにも秘密にしなければと思ったとたんに表情筋が固まりだし、何となく会話も弾まずぎこちなくなっているのだ。

「……何か困ってる?」

気遣ってくれるケネスの態度は嬉しい。だけどこれは、誰にも内緒にしなきゃならない。

「だ、大丈夫ですっ」

「そう? ならいいけど。君が落ち込んでると、ザックの調子まで落ちるからね」

ケネスがポンポンを頭を軽く叩いてくる。今ではすっかり兄のような感覚だ。

「はい」

少しほっとしてほほ笑むと、長い脚がこちらに向かってくるのが見えた。

「ロザリー」

「は、はいっ」

ザックの声に再び緊張が走る。
ザックは少しばかり傷ついた顔をしていた。

「ケネスから夜会の話は聞いたろう? よければ、俺にエスコートさせてもらえないか」

いつもならば嬉しいお誘いだが、ロザリーはぴきーんと固まった。
助け舟を出してくれたのはケネスだ。