兄の政敵でもあるバーナード侯爵派の貴族たちが、「それはぜひ食べてみたい」と盛り上がっている。
食べ物に罪はない。マデリンも少しばかり興味がわいた。
「それは実に興味深いですね。私も食べてみたい」
凛とした声は、第二王子アイザックのものだ。人の目を引く、母親似の容姿をしていて、マデリンはそれも気に入らない。
「おお、これはアイザック殿下。是非に食べていただきたいですよ。そうだ。我が家で夜会を催しましょう。殿下にお運びいただくには狭い屋敷ですが」
「なにを言うんです。イートン伯爵。ご立派なタウンハウスじゃありませんか。その絶品だという料理、ぜひ食べさせていただきたいものです」
アイザックの賛同に、我も我もと賑やかさが増した。兄嫁でさえ、「あら……」と羨ましそうにそちらを見ている
「ええ。良ければ皆さま、ぜひお越しください。招待状を出しましょう」
イートン伯爵の声に、わっと歓声が上がった。
とはいえ、招待されるのはイートン伯爵が所属するバーナード侯爵の派閥だけだろう。



