「僭越ながら私がお教えしましょう」

カイラ付きの侍女はなかなかに仕事が早い。
昨晩、ロザリーは『内庭を手入れしている人に、花の手入れの仕方を教えてもらいたいので紹介してほしい』と頼んだのだ。

そうしたら、やって来た人物は、警備を担当するイートン伯爵の私兵のひとり、ウィンズだった。

「ウィンズさんは詳しいんですか?」

「まあ人並み程度ですかね。家で少しやらされるくらいですよ。こういったお屋敷と違って、我々の家は庭も狭いですから」

「本当はここを担当している庭師さんにお願いしたかったんですが」

「庭師は数か月に一度の契約でしか入らないはずですよ。この離宮は頻繁でもありません。入口の方は鬱蒼としているでしょう?」

それは、ロザリーが気になっていたことだ。
外見からはまるであばら家を想像させるほど木々が鬱蒼としているのに、内庭だけこまめに手入れされている。

「ウィンズさんが内庭の整備をされるんですか?」

「時々……ですね。頼まれたときだけ」

さりげなく、ロザリーはウィンズのにおいをかぎ取る。
だが違う。ロザリーがみつけた内庭に残る匂いとは違うのだ。

「でもどうしたんですか? 突然。庭仕事がしたい、なんて」

「カイラ様がお花が好きなので、お手入れ方法が分かったらいいかなと思ったんです」