好きになるには理由があります

 
 


 清春が先にホールに入り、深月も後に続こうとしたが、陽太に後ろから腕を引っ張られる。

 よろけて、陽太の胸に後頭部がぶつかりそうになり、深月は慌てて逃げた。

「まったくお前は油断も隙もないな」
と陽太が言ってくる。

「お兄さんに俺とのことを訊かれるのかと思って、ひとりで行かせたのに。
 迫られているとはなにごとだ」

「いえあの、『兄に貴方のことを訊かれた』で、なにひとつ間違ってないと思いますが」
と深月は言い返したが。

「ふたつ間違ってるし、問題があるだろう」
と陽太は言ってくる。

 陽太は指を突き出し、数えながら言ってきた。

「ひとつ、あの兄はお前に気があるっ。

 ふたつ、あの兄は兄じゃないっ。

 みっつ、誰に似たのか、すごいいい男じゃないかっ」

「ふたつまでじゃなかったんですか……?」