「この娘と結婚するのなら、わざわざ秘書室にまで引っ張り込まずともいいだろう」
と言う川久保に、

「いや、いつも見ていたいんだ――」
と陽太は言う。

 いや……、照れるではないですか、と俯く深月を陽太が手招きする。
 
 深月はデスクを回って陽太の側に行った。

 挨拶させられるのかな、と思いながら。

 だが、陽太はいきなり、深月の手を引っ張ると、よろけた深月をおのれの膝に座らせる。

 逃げられないよう深月の肩をがっしり抱いて、陽太は言った。

「俺がこうしていちゃついて仕事してるとでも思ってるんだろ。
 俺は仕事とプライベートはちゃんと分けている」

 ……そうでしたっけね。

「深月も今では秘書の仕事もちゃんとこなしているし。
 なあ、英孝」
と陽太は擁護を求め、杵崎を見たが。

 杵崎は、ああ、はあ、まあ……みたいな感じで目をそらしている。

 もっとも近くで仕事している分、深月がたまにやらかす、うっかりミスもよくわかっているからだろう。