好きになるには理由があります

 観念した万理は笑顔を浮かべ、中に戻った。

「きよ……」

 清春、私のスマホ、見なかったー?
と軽く訊くつもりだった。

 だが、
「万理」
と低く呼びかけられ、きよ……のままフリーズする。

「深月を知らないか?」

 ひーっ。

 やっぱりそう来たかっ。

 っていうか、その綺麗な目でまっすぐに見つめないでっ。

 清春の茶がかった瞳には、この世の中の穢れたことなんて知りませんという風に書いてある。

 神職になるために生まれてきたような男だ。

 そして、深月もだ。

 深月の、清春とは対照的な黒々としたあの瞳。

 あれで、捨てられた仔犬のように見つめてこられると、にっくき恋敵なのに、拾いたくなる。