あたしは窓枠に足をかけ、靴下のまま外へ出た。


外にいると少しだけ現実世界に戻れるような気がした。


寮の中、学校の中にいるときとは違い、ほんの少しの解放感があるのだ。


といっても、この島にいるかぎり監視カメラはついてくる。


あたしが今外へ出た光景も、きっと誰かに見られていることだろう。


いつも通りスマホの明かりを頼りにして歩き始める。


その間スマホが鳴ったが、あたしは気にせず海へと向かった。


海がすぐそばに見えると、ようやく歩調を緩めることができた。


海はどこまでも暗く、そして深く見えた。


「最後にはちゃんと会話をすればよかったよね」


あたしは海へ向けてそう言った。


克己はあたしと別れてからも、ずっとあたしのことを思ってくれていたのかどうか。


それが知りたくてここまできた。


でも、もちろんその答えを知っている人間はもういない。


生きている限り、会う事はできない。


だから……。


「なにしてるの?」


そんな声が聞こえてハッと息を飲み、同時に振り向いた。