優しい風が吹く




それを寂しいと思うのは違う。

喜ばなくちゃいけない。でも……。



「一緒に行こうよ」

彼が嘘のない瞳で、私のことを見た。


そう、この目。

彼と出逢う前、私は人なんて信じられないと思ってた。


嘘ばかりつかれて苦しんだ。でも、彼は私に嘘をついたことがない。

そんな正直さに、そんなまっすぐさに、何度も何度も心を持っていかれそうになった。


「……まだ、怖い」

この街を出れば、彼みたいに良い人ばかりがいるわけじゃない。

また傷つくかもしれない。

同じことを繰り返してしまうかもしれない。

歩く一歩は簡単なのに、踏み出す一歩はこんなにも難しい。



「でも俺、お前のこと見つける自信あるし」

「……それがどんなに難しいことか分かってんの?」

「うん。でも見つける。だって、またお前と出逢いたいもん」

彼の瞳は、やっぱり涙が出るほど嘘がない。