どれぐらいそうしていただろう…。
いつもより長いシャワーの音に気が付いて、あたしは音を立てずに脱衣所まで歩いていった。


「……っくしょっ……っっなんなん、だよっ」


不意に聴こえてきたのは、頼り気なく今にも泣き出しそうな侑斗の声。
それを聴いて、あたしはハッとした。

もしかして左手の傷が痛んでいるんだろうか?

そして、それを一人で抱え込もうとしているんだろうか……?

あたしは、なんとなく声を掛けられずにそのまま、また音もなくリビングに戻ってきた。


いつだって、あたしの予想を遥かに越えた所で一人闘っている侑斗。

普段の生活で侑斗に頼られることは当たり前でも、精神面で癒されているのは、あたしの方で。


「ヤキ、回ってるかも……」


吐き出した溜息と一緒に零れる苦笑い。

なんでもしてあげたいと、ここまで焦がれることは初めてで。
愛し方を知らないあたしは、正直、上手に侑斗を愛せているか自信がなかった。