それに……。


視線を更に下へと移動した。


あたしの足首にしっかりと絡み付く黒い糸。


それを見た瞬間、あの部屋の光景が蘇ってくる。


輝明の両親も無事に助け出されたが、まだ入院中だ。


精神的なショックが大きすぎて、二度と日常生活には戻れないかもしれないらしい。


それだけで、輝明がどれほど猟奇的なことをしてきたのか、わかる気がした。


そんな相手とあたしは、まだ糸で結ばれている。


輝明が少年院から出て来たら、その時はまた……。


一瞬、佐恵子の顔が輝明の冷たい笑顔に見えた。


「嫌!!!」


勢いよく、椅子を蹴とばして立ち上がり、佐恵子から遠ざかる。


「朱里? どうしたの?」


『朱里ちゃん? どうした?』


目の前にいるのは佐恵子なのに、輝明の声が聞こえて来る。