舞台は森の中。


出て来るキャラクターはあたしと俊和の2人だけだ。


2人で森の中をさまよい歩きながら、自分たちの過去を振り返る。


そして最終的に2人が心中を決断するというものだった。


それを見た祐里が「恋が実らない内容でよかった」と、わざと大きな声で言って来た。


あたしは聞こえないフリをして、台本に視線を落とす。


「じゃあ、これからロケに使えそうな場所を探すぞ」


浅野先生が部屋に入ってきてそう言ったので、あたしはホッと息を吐きだした。


こんな狭い室内より、外へ出た方がずっと気分が楽になる。


全員で外へ出歩き出すと、ジンワリと汗が滲んで来た。


それが今は心地よく感じられる。


「1番大切なのは2人が心中で使うシーンだな。構想はあるか?」


前を歩く浅野先生が孝利にそう聞いた。


「地図で確認するとこの近くに池があるんです。そこが使えるかどうか確認したいです」


さすが孝利だ。


あたしみたいに、友人関係でブレたりしない。


尊敬しなければいけないところだった。