「相澤くん、本当にありがとうね」


そう言うと彼はゆっくりと視線を上げて、私の目を真っ直ぐに見た。


男子のことを上から見るなんて中々ないから変な感じ。


彼は視線を絡めたまま、逸らそうとしない。



「…洸、って呼んで」


熱い。


彼の熱い視線が、私の目を捉えて離そうとしない。


え、と発した声は多分声になっていない。


静寂が、私たちを締め付ける。


私たちはおそらく初対面。


話すのはこれが初めてのはずだ。


だから彼がどうしてこんなことを言うのか分からなかった。


しかもこんな、人を動揺させるような目で。


「こ…、」


雰囲気に負けてたまらず私が彼の名前を呼びそうになったとき。


ガラガラと音を立てて保健室の扉が開かれた。